Archive for the ‘Apple’ Category

iPhone版iBooksでの写真や表の見え方

金曜日, 8月 13th, 2010

しばらく前に、写真や表を含むEPUBファイルがiPhone版iBooks(ver.1.1.2)でどう見えるかを試してみました。すでに広く知られていることかもしれませんが、メモ代わりにブログにアップします。

写真の見え方

使用したデータはカトキチさんの『6月のオススメレシピ』です。このオススメレシピは毎月、Podcastで配信されているようなので、興味のある方は上記サイトからどうぞ。

『6月のオススメレシピ』のEPUBファイルをiPhone版iBooksに取り込み、閲覧してみたのが以下の図1~2で、連続したページをキャプチャーしています。見てのとおり、最初の写真のキャプションが、1ページめと2ページめにまたがって表示されています。

図1

図1

図2

図2

文字をワンランク大きくして同一ページを見てみましょう。文字が大きくなった結果、1ページめの写真表示スペースが狭くなったので、今度は、最初の写真が1ページめと2ページめにまたがって表示されました(図3~4)。

図3

図3

図4

図4

表の見え方

今度は、医薬品の添付文書のデータをもとに、EPUBファイルを自作してみました。EPUBファイルにする前に、表(<table>タグを用いて組んだ表)が含まれているXHMTLファイルをMac OS XのSafariで表示してみたのが図5です。

図5

図5

EPUBファイルを作成し、同一の表が出てくる部分をiPhone版iBooksで見てみると、表の左右幅はiPhoneの画面サイズに応じて調整されました(図6~8)。しかし、表の天地幅は、左右幅が短くなるのに応じて増えますので、表が3ページにまたがって表示されました。

図6

図6

図7

図7

図8

図8

1つのHTML(XHTML)ファイルは、Webブラウザでは1つのウィンドウに対応し、文字量が多くても、長い巻物状のコンテンツを上下にスクロールすることにより、最初から最後までそれを閲覧することができます(図9・左)。しかし、iPhone版iBooksでは、iPhoneの画面サイズによって規定されているコンテンツ表示領域(紙の本で言えば版面[はんづら])を「1ページ」と見なし、この「ページ」単位で、長い巻物状のコンテンツを自動で分割しているようです(図9・右)。そのため、この分割ライン上に写真や表がのってしまった場合は問答無用で分割され、複数ページにまたがって表示されるものと思われます。

図9

図9

回避策

写真や表が複数ページにまたがって表示されると、読者にとっては見づらくてしかたありません。そこで、これを回避する策について考えてみます。

まず考えられるのは、青空文庫の改ページタグに相当するタグを使うことです。改ページを制御できれば、少なくとも1画面内に収まる大きさの写真や表であれば、複数ページへのまたがりを回避できます。

ネットで調べてみると、CSSのpage-break-{after,before}が使えるかもしれない、という情報が見つかりました。そこで、早速試しにやってみましたが、残念ながら、閲覧中のEPUBファイルの改ページは制御できませんでした。

CSSのpage-break-{after,before}はもともと、Webブラウザで閲覧している画面を印刷する際、強制的に改ページさせるプロパティです。このプロパティは、通常のWebブラウザでも印刷時にしか働かないため、閲覧中のEPUBファイルの改ページ制御には使えないものと考えられます。

次に考えられるのは、ある文字列に吹き出し表示のJavaScriptを埋め込み、読者がその文字列をタップした際、その中に写真や表を表示させることです。実際、Liza Dalyさんは、iPad版iBooksで、JavaScriptによる写真の吹き出し表示に成功していました(JavaScript and interactivity in iBooks : Threepress Consulting blog)。

しかし、このサイトからダウンロードできるサンプルデータをiPhone版iBooksにインストールしても、残念ながら、埋め込まれたJavaScriptは機能しませんでした。iBooksはユニバーサルアプリとして提供されていますが、ことJavaScriptの動作に関しては、iPad版とiPhone版とで違いがあるようです。

以上述べてきた点を踏まえると、iPhone版iBooksで写真や表を確実に1画面内に収めるには、

  • 章単位あるいは節単位等で1つのXHTMLファイルを対応させるのではなく、写真や表の出現箇所でファイルを分割する
  • <table>タグを用いて表組みすると、文字サイズが変更された際に表の大きさも変わってしまうので、画像ファイルにする

という方法しかないようです。

AppleはiTunes Storeの審査基準を早く国別に定めるべき

水曜日, 5月 12th, 2010

講談社がAppleのiTunes Storeに申請した電子書籍のうち、約30%がリジェクトされたようです。それも、日本で許容される表現がAppleの基準では不可。詳しくはこちらの記事を参照してください。

以前、アダルトアプリがiTunes Storeから一斉削除されて話題になりましたが、日本でまったく問題ない表現さえ許容されないとなると、Appleファンの私でもさすがに頭を抱えます。iPadは日本でも大ブレイクしそうですし、日本においてマンガはiPadを購入する大きな動機づけとなるだけに、Appleのこの方針は残念でなりません。

Appleは、米国一律の基準を国別の基準に早く改めるべきです。文化は当然国ごとに異なるわけですから、一律の基準を押し付けるのは少々無理があると言えましょう。iTunes Storeで入手できるアプリは国別に違うわけですし、審査基準を国ごとに設けることぐらい造作もないはずです。そうしないと、出版社はiPhone/iPad向けにコンテンツを提供することに腰が引けてしまいますし、そもそもマンガ家の方々がiTunes Storeにコンテンツを出品しなくなるでしょう。

追記:
以前、hon.jpでこんな記事が流れました。

私は「検閲」に対して基本的に反対ですから、アダルト専用カテゴリの設置には賛成票を投じます。また、マンガの中には青少年向けとして不適切なものがありますから、これらもアダルト専用カテゴリに入れてしまえばよいでしょう。こちらについても、Appleには早急に対応していただきたいものです。

「MobileMeを無料化?」するのは筋が通っている

土曜日, 5月 8th, 2010

Appleはクラウド化に向けて大きく前進する?

AppleがMobileMeを無料化するという噂が流れているようです。第一報を報じたのはMac Rumorsのようですが、私は、iPhone 3G Wiki blogさんmaclalala2さんの記事で知りました。

Appleのこれまでの動きは、MobileMeを有料化していた、iPod/iPhone/iPadに対して母艦を必要としたという点で、クラウド化に対して今ひとつちぐはぐでしたが、近い将来MobileMeが本当に無料化されるとしたら、これで一本筋の通った形になるでしょう。

MobileMeが無料化されたらどう変わるのか? いくつか予想してみたいと思います。

1)母艦が必要なくなる
Mac/Windowsといった母艦が必要なくなり、MobileMeが「母艦」になる可能性があります。ただし、その前提として、現在欠けているピース──つまり、無線LANによる同期──が埋められなければなりません。

2)iWork.comが統合される
今やほとんど忘れられているサービスとして、iWork.comがあります。現在、β版で、提供されているサービス自体たいしたことはありませんが(主としてiWorkファイルの共有のみ)、当然、このサービスは統合され、新しいMobileMeで提供されるサービスのひとつになるでしょう。

3)ソーシャルメディアになる
現在のMobileMeはソーシャルメディアの機能が不十分です。実際、Appleはこれまで自らソーシャルメディアを提供せず、iPhotoのおけるFacebook、Flickrとの連携にみるように、他のソーシャルメディアと連携するアプローチをとってきました。

しかし、MobileMeが無料化されれば、Mac/iPod/iPhone/iPadユーザは気軽にMobileMeを利用できるようになります。「Apple」という巨大なブランドによって束ねられたユーザ群はMobileMeという「場」に統合され、魅力的なソーシャルメディアになりうる可能性を秘めています。実際、iPhone OS 4.0に搭載されるソーシャルゲームプラットフォーム「Game Center」は、その方向性を示唆しているのではないでしょうか。iWork.comが統合され、さらに機能が付加されれば、文書共有サービスScribdと同様のサービスを提供することも可能になります。

もっとも、既存のソーシャルメディアに対抗しうるサービスを一気に用意するのは困難です。MobileMeが無料化された後、ソーシャルメディアとしての機能が少しずつ付加されていくと思われます。

4)コンテンツへのアクセス権だけを購入する時代が来る
コンテンツ保持者にとって、ダウンロード販売は諸刃の刃でした。例えば、音楽レーベル各社にとって、CDの販売減や違法ダウンロードに対する対策としてiTunes Storeの話に乗ったわけですが、コンテンツのデータがローカルのPCに保持されるという状況はレーベル各社にとって決して好ましいものではありません。

しかし、クラウド化が進めば、コンテンツのデータは常にサーバ側にあり、ユーザはそれに対するアクセス権だけを購入するという形態が可能になります。コンテンツ保持者のとって、これほど望ましい販売形態はありませんし、ユーザにとっても、ネットワーク接続環境がある限り、いつでもどこでもコンテンツにアクセスできるため、利便性が損なわれることはありません。

ただし、音楽だったらCDに残しておきたいというニーズは存在し続けます。コンテンツの販売形態は、コンテンツへのアクセスだけが可能なケース、コンテンツのダウンロードとアクセスが両方可能なケースといった具合に2つに分かれ、前者の価格は後者よりも安く設定されるのではないでしょうか。

     *     *     *

予想される主なシナリオはこんなところです。もちろん、予想の前提となっている「MobileMeの無料化」は単なる噂なので、ここに書いてきたことはまだ空想の域を出ません。

しかし、今年4月、Appleが第2四半期の業績を発表する際、Jobsは、「今年中にはさらに素晴らしい製品をいくつか計画しています。と述べています。「MobileMeの無料化」がそのなかのひとつだとしたら……ユーザにとってこのうえないプレゼントになることは間違いないでしょう。

再定義された「The Computer for the Rest of Us」としてのiPad

金曜日, 5月 7th, 2010

普通の人々にとっての「コンピュータ」とは

今日、いつものようにブログを巡回していたら、気になる記事を2つ見つけました。1つは、iPadの登場でネットブックの成長率に陰りが見えてきたという記事、もう1つは、EMCの副社長、Chuck Hollis氏がブログに書いたもので、自宅用にiPadを購入したら家族がPCを使わなくなったという記事です。Chuck Hollis氏は踏み込んで、「今度デスクトップやラップトップを購入するとは思えない」とも書いています。

古くからのMacユーザーであれば、Macが登場した頃、「The Computer for the Rest of Us」(普通の人々のためのコンピュータ)というキャッチコピーが使われたことを覚えているでしょう。当時はPCの黎明期で、PCをコマンドで操作しなければならない時代でした。しかし、新しく登場したMacはマウスやGUIの概念を導入し、従来のPCのイメージを変革します。それ以来今日に至るまで、PCの操作法自体大きく変化していないことは、改めて指摘するまでもありません。

1980年代と比較して、今日のPCの性能はハードウェア的にもソフトウェア的にも飛躍的に向上し、PCであらゆることができるようになっています。しかし、一方でそれは、PCに複雑さの増大をもたらし、「the Rest of Us」(普通の人々)がPCをフルに使いこなせないようになっていました。iPadはまさにそんなタイミングで登場してきたわけです。

iPadはまだできることが限られているため、当面はネット接続用のセカンドマシンとして登場したネットブックの市場と、ラップトップ市場の一部を侵食するにとどまるものと思われます。今後さらにOSとハードウェアの性能が向上した段階でも、iPadがPC市場を完全に置き換えてしまうことはないでしょう。

しかし、PCをコンテンツ消費端末の目的で購入していた人々にとっては、ファイルシステムの内部を自由に探索できず、余分な複雑さのそぎ落とされた(というよりは、ブラックボックス化されている)「不自由な」iPadが、逆に魅力的な選択肢となります。Appleは、指という人間にとってより自然なインタフェースを使うことで、「The Computer for the Rest of Us」を再定義したのです。

参考: